父の20年来の
夢でした

父の20年来の夢でした

父が20年以上、船旅に憧れ続けて80歳。始めの一歩が出せないうちに母が難病になり、次の年に手術をすることにしましたので、父は船旅はもう諦めると言いました。サービスの整った船なら車椅子を使えば何とか連れて行かれるのではと、もう秋の終わりでしたので日本を年内に発着で魅力ある船をあわてて探したのがダイアモンドプリンセスでした。満室のためキャンセル待ちで申し込み、まさかの10分後に海側バルコニー3人部屋のキャンセルが出たのでした。

母も、父を船に乗せてあげたい一心で「私行くわ」と覚悟を決め、それからはもう、フォーマルデイは恥ずかしがらずに派手に楽しもうということになり、母には真っ赤なドレスと帽子、父には赤いビロードの蝶ネクタイをプレゼントしたら、二人ともとても似合っていて仲良し夫婦そのものでした。

スタッフさん達がいろいろとご配慮くださり、楽しくて美味しくて、どれほど素晴らしい旅だったか等書ききれません。父は今でも撮った写真を絵にかいたり、「凄く乗りたかったけど、まさかあんなに凄いなんて。もっと早く乗ればよかった」と、数年たっても思い出話が花盛りです。

レストランの母の指定席には、日本人の女性スタッフさんが特製の分厚い座布団を敷いてくださいました。その節は本当に有難うございます。次回の航海でもお会いできると嬉しいのですが。

船旅の次年の手術が無事に終わり、もしかして皆で頑張ればもう一度?と、来年のGWに5人で予約をとりました。数回乗っている人のカードの色を見るたび、こんなに楽しいなら生涯にもう一度乗りたかったと思っているだろう父の眼差しが切なかったので、もう一度乗船できそうで良かったです。

ダイアモンドプリンセスで父の夢が想像を超えて叶い、父が楽しそうに話すのが私の幸せで、私にとっても両親との一生の思い出になりました。

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