初乗船初延泊からの初快晴

初乗船初延泊からの初快晴

17歳の夏休み、生まれて初めて乗ったクルーズ客船がダイヤモンド・プリンセスでした。
日本大通り駅からLLサイズのキャリーケースを引いて歩いていると、見えてきたのは横浜の海に浮かぶマンションのような大きな客船。両親と顔を見合わせて、息を呑んで、待ちきれなくなって大さん橋に向かって走り出してしまったことをよく覚えています。

乗船して初めてのディナー、テーブルの上に並んだワイングラスがカタカタと音を立てて揺れており、「これが”船上の食事”ってやつだ!」と感動していました。隣席の夫婦の会話が聞こえてくるまでは。
「こんなに揺れるなんて初めてね」「台風と被っているんだろう?」
実は、乗船した日程が台風と丸被りしており、常連客や乗務員さんですら経験したことがないほどに船体が揺れていたのです。

韓国の釜山港では船が出港することができずに延泊を経験、航路も変更、寄港地は無しに。
煌びやかなアトリウムでおじさんたちが非常用に開放された船上Wi-Fiを使用して、会社に延泊の連絡を入れていた姿が印象に残っています。そんな大人たちの気も知らずに、まだ子供だった私は、予定より1日長く船の中に居られること、美味しいコース料理が1日多く食べられることを喜んでいました。
しかし、毎日暴風雨を見るのも退屈なもので、「夏なんだから青い空に白い雲!!360度海しか見えない大海原を見てみたい!!」と嘆きながら部屋の窓から荒波を眺めていました。

そして迎えた最終航海日。
目覚めたときに確信しました。明らかに晴れていると。窓から差し込む光の量が今までと全く違うと。
さっさと支度を済ませ、一眼レフを片手に甲板に出ると、そこに広がっていたのは真っ青な海。太陽に照らされた海面はキラキラと輝き、船体の周りにはクリームソーダのような白波が立っていました。台風が雲を一掃してくれたのか、空は雲一つない快晴です。
私はコーラ、父はハイネケンを甲板のバーで購入し、日焼けも気にせず周りが見渡せる屋根のないカウンターで乾杯しました。

それから、この船で一番景色が良い場所で大海原を見てみたいと思い、船上で一番高い場所に行って撮影した写真がこの写真です。
生まれて初めてクルーズ客船に乗った当時の気持ちを鮮明に思い出させてくれるこの写真は、私と家族の宝物です。

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